事故とジョーカー

 9日続き。けっきょく家から一歩も外へ出なかった。終日体調の最悪だったYさんは自分も昨晩の飲酒がたたって具合が悪いのではと訝ったけれど、そんなことはない。体調は良かった。しかし、どうにも気分が出なかったのだ。冷蔵庫に食べ物はたんまりあるし、買い物へ行く理由も無く、ただゴロゴロして過ごした。夜はうどんの一玉を二人で分けてラーメンサラダなども作って食べる。

 10日。Yさんどうにか出勤。いったん帰って就職のことをして、昼を食べてから自転車で外へ。日雇いの会社まで行って用紙をもらい、といってもドアの前から抜いてきただけだけれど、そのまま自転車でみなとみらいへ。お気に入りのおはぎと季節商品の柿大福を購入。店から出てケータイを見るとお父さんから着信がある。折り返すけれど出ず、自転車で帰りながら電話など。もう家の前に来ているというので慌てて帰宅。約束していた山賊と野菜をいただく。お返しにリンゴや買ってきたばかりのおはぎを差し上げる。午後に来ると聞いていたのに待たせてしまって申し訳なかった。バタバタしていたので渡すつもりで買ってあった鈴カステラを忘れる。夜はいただいた山賊とサツマイモの煮付け。やっぱりべらぼうに美味い。

 11日。洗濯を済ませて午前中から歩いて出る。ハロワへ。自宅で検索しておいた応募先の紹介状を出してもらう。カルディに寄ってから帰路。と、その時だ。大きな交差点に差しかかったところで女性の高い叫び声が聞こえ、なんだと見ると大きな音とともに青信号を渡っていた自転車に乗用車が横から激突。事故だ。自転車は当然のように倒れ、停まった車から大慌てで男が飛び出してくる。倒れた女性はしばらく起き上がれず、どうしようかと皆が思っていると、なんと救急車のサイレンが近づいてくる。車が現場に差しかかるや、おや、という感じで明らかに事故っている状況に気が付き、救急車が停まって中から隊員が出てくる。どうやら男が説明している様子。救急車は再び発進していったが、おそらく警察を呼ぶなりしてくれただろうととりあえず安心してその場から離れる。しかし、衝撃は大きい。コンビニに寄ってから帰宅。Yさんに話す。遅めの昼食に町田康の『スピンク合財帖』を元にリングイネを茹でてアンチョビで炒めて食べる。美味い。そしてどうしようかと話し、行こうということでバタバタと家を出る。みなとみらいの映画館へ。ジョーカー。久しぶりの映画。そして、見終わって、しばしYさんとは口もきけず、映画館を出て、ようやく歩きながら話す。すごかった。Yさんもすごかったと。めちゃくちゃ良かったと。なんとなく夜風に当たらなければならず赤レンガまで歩く。夜の海を眺めてからさらに歩いて話す。あれやこれや。Yさん、いずれもう一度見に行くと言う。歩いて地下のスーパーへ。カルディで猫の缶と、こないだのおはぎを30%引きで買い、あとは生ホッケを買う。夜の道を歩いて帰宅。蕎麦を茹でて温かくして食べる。

 12日。朝はパンとおはぎ。履歴書と職務経歴書を書いて封筒に入れ、郵便局へ出しに行くついでにYさんと散歩。トラ猫を撫でたり久しぶりに顔を見た柴犬に挨拶したり。公園でひとやすみ。女の子が母親と遊んでいる。ベンチでバナナを食べてお茶を飲む。とても良い天気。遠出はせずに歩いて帰宅。賞味期限の切れたペヤングのかたやきそばを食べて昼寝。夕方、一人でスーパーまでビール的な物を買いに。明日の日雇いは行かないことにする。どうやらジョーカーと、それから目の前で起こった交通事故とにやられているらしい。夜、生ホッケと手羽元の煮物。

 今日。Yさんを送ってからスーパーで牛乳を買って帰宅。洗濯に掃除。そして新たな短期バイト探し。そう遠くない場所の仕事を選んでなんとなく登録。返事が来るのはいつになるだろう。そして、明日の仕事はどうしよう。ジョーカーについて覚え書を記しておこうかと考えているけれど、出来るかどうか。ちょっくら買い物に行こうか。とにかく金が無い。そして、不安が深くなったり浅くなったり、また深くなったり。