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インプロヴィゼーション―即興演奏の彼方へ

インプロヴィゼーション―即興演奏の彼方へ

年末年始をかけて通読。自分はインプロヴィゼーション(即興音楽)と呼ばれるようなものを聴きはじめてまだほんの2〜3年なんで、そもそもこのシーンに関する知識は相当に薄いのですが、そんな自分にも非常に示唆に富んだ、インプロヴィゼーションという音楽(概念)が抱えている問題群が幅広く表されている一冊のように感じました。原著が発表されたのが1980年(邦訳は翌年の81年)なんで、これ以後も様々な議論(と音楽実践)が行われてきたことでしょうが、なんかこの一冊は決定的なんじゃねえか?という気すらしてしまいました。なによりもこうした問題意識を網羅したまとまったテキストがデレク・ベイリーという第一線の演奏家によって著されたことが重要で、逆にいえば、実践に関わっている人間の言葉があまりにも説得性を持ってしまっているという問題(「小説のことは小説家にしかわからない問題」とか「だったらあなたがやってみたらいいじゃないですか!問題」とか、はちょっと違うか……)もあらためて感じました。ま、デレク・ベイリーに限らず即興音楽に関わっているミュージシャンは思考することから逃れられないでしょうし、その反面として「非コンセプチュアルな即興音楽」を考えている人も当然いるかもしれませんが。も含めて、まだ知識も聴取経験も浅い自分にとってはさらなる欲求を喚起させる良著でした。