職場(バイト先)にて

 休憩室で女子ソフトボールのテレビ中継が中途で終了するのを見るともなく見て、さて仕事に復帰するかと休憩室を出ようとしたところ声をかけられる。かいつまむと、あろうことか大学の後輩が同じ職場にやってきたらしい。いや、ぼくはこれまで現在の職場で自分の大学の話をしたことは一度たりとも無く、当然ぼくの出身大学を知っている同僚はいるはずもないのだけれど、今日ぼくに声をかけたというのが、ぼくが履歴書持参でバイトの面接を受けたその人だったのである。果たして、初めて目にしたその後輩とやらがまた、いかにもあの大学らしい汚らしいエリートぶった顔をした奴で「いやあ、俺は別にこんなとこで働くような下等な人間じゃあないんだけれども、まあ一般庶民と触れ合うってのも気晴らしにはいいかと思ってさ」ってな感じの(これはおもいっきりぼくの一方的な印象だけれども)、つまり、なめた野郎である。まったく、ここに来た頃のぼくのようである。
 たまたま先日読んだ町田康のエッセイにこんな文章があり、はっとしてしまった。

無能なのだけれども自分が結果を出せないのは無能なのではなく、適度に力を抜いて仕事をしているからだ、と思い込んでミスばかりするのだけれども、俺が本気を出せばこんなミスをしないとどこかで思っているから叱られてもまったく反省しないで口先だけで、「どーもすみません」かなんか言ってへらへらしている総務部の社員みたいな奴が妻子を連れて鈍感な感じで歩いている。(『東京飄然』)

これはまさしくいま目の前に座ってへらへらしている大学の後輩、そして、同じくへらへらしている現在の自分自身なのではないかと。ぼく思うに、彼はきっと長続きせずに辞めてしまうだろう。そして、さて、ぼくはこれからどうしようか……。