予兆(つまり絡めとられる妄想)

 深夜に明日の燃えるゴミを出そうとして、アパートの階段で雌のカブトムシを踏む。踏まれた雌のカブトムシは苦しそうに足掻く。ゴミを出して戻ってきたら階段を一段下がった段にてひっくり返っている。明日以降きっと我が身に不運が降りかかることだろう。意図せずに大きな生き物が小さな生き物を踏みつけて全くの偶然で命を奪う/奪われるということはいったいどういうことなのだろうか。先日の突然の先輩からの電話で聞いた志賀直哉の『城の先にて』という小説が頭をよぎる。明日以降きっと我が身に不運が降りかかることだろう。いまから妙な覚悟を決めておこう。