花鳥風月という言葉は好きではないけれど・・・2007。

 晩のお菜を買いに外へ飛び出してみました。たいへんな春です。これからの季節で心地が良いのは、桜だとか梅だとか、あとは僕が生まれ育った土地ではその生産量が日本一とかでとりわけ馴染みが深い杏なんかが一斉にブワッと咲いて間もなく散るのを合図にしたように、徐々に徐々にあれこれの花々が咲き始めて、目を上げても下げても飽きることなく日中の散歩を楽しませてくれるところです。ひときわ存在感のあるチューリップだとか、どこか貧相なポピーだとか、決して閑静とはいい難い住宅街にふさわしくツツジがこれでもかと鮮やかに色をみせるのはやはり心が休まるものです。しかし「咲き乱れる」とはまことに官能的な表現です。他にも時折り鳴き声が聞こえると「おや、いましがたウグイスが鳴いたぞなもし」と人をして即座に虚の空間に放り込むホーホケキョは偉いものです。小さな子連れの母親がいまそこで鳴いてたよといいながら薮の中をきょろきょろ覗いているのもたいそう趣があります。そんな情緒を悠長に感じていられるのもこれ全てプレカリアートの特権といったところでしょうか。僕のようなフリーターが男衆不在の平日の住宅街の平穏を守っているのです。安定した収入を放棄してまでね。ホーホケキョ。