精読、鑑賞、とロボット

 たしか9日。群像2月号の青木淳悟「私のいない教室」読了。およそひと月かかった。今回は留学生を迎えた「担任」の業務日誌といった風で前編を通して一切の物語的なヤマがおとずれない脅威の作品。こんなに本気で眠くなる小説は初めてかもしれない。しかし、すごい。これはやばい。『このあいだ東京でね』も相当驚いたしほとんど爆笑しながら読んだけど、そのさらに進化系というか最果てまでいってしまっているのではないだろうか。傑作。やっとこすっとこ読み終えてから敢えてもう一度戻って最初から読むとそこにはまた新たな驚きが。いきなり今年一番やばい作品に出会ってしまったかもしれない。
 たまたまブックオフで手に取った二葉亭四迷『平凡』を読んでいるのだけれど、これまた面白い。ほんとにたまたまと言っていいのかというくらい今の状況にグイグイくいこんでくる。残り数十ページがなお楽しみ。
 昨日。雪の舞うなか国立へ。いちおう公民館の平和講座への一般参加というかたちだったのだけれど、久しぶりの友人や初めて会う友人にも出会えて、そこはそれでたいへんに嬉しい。でもって最大の目的は國本隆史監督作品「ヒバクシャとボクの旅」の鑑賞。まず率直な全体の感想。すごく国本さんらしい映像作品だなと。もちろん被爆者の姿をカメラに捉えているという意味でテーマは戦争や平和といったものなのだけれど、おそらくこれはそれだけではないし、それは監督本人が一番自覚しているのではないだろうかと。自問自答ならぬ自問他答再自問のループ。一見「反戦映画」のようでそれが提示するのはもっと根本的な「はたして人間は分かり合えるのだろうか?」みたいなこと。理解、共感、体験、想像……、そういったことの限界と可能性を問いかける意欲作(であり問題作。だから監督への質疑応答の時間にイロんな意見が出て、それこそがまさにこの映画の肝だったりするのだろうけど)。映っている大半はあくまで記録映像的でありながら、だからこそ編集の恣意性がメタ的に表れているのも国本監督ならではといったところか。その後、トムで監督と一緒に飲んでDVD買ったんでもう一回は観てみよう。
 でもってその帰り、うっかり東京まで出てしまったのが災いして最寄への終電を逃し、大船から歩いて帰るも途中で道に迷い、さらには泣きっ面に蜂、うっかり数年振りにクソまでちびり、最低な感じで帰宅。(時間的にはたぶん30分くらいの遠回りだったのだろうか?)この歳にしてこんな感じ。ここまできたらむしろ気持ちが良いわ。