少女たちの王国に王は存在するのか

 品川は原美術館の「ヘンリー・ダーガー展」に行ってきました。最終日とあってか、いやあ混んでること混んでること。それにしても客層若かったなあ。しかもその大半がレポートのネタ探しに来てる美大生って感じで(もちろん僕の偏見ですが(笑))。混んでる割には客の流れはスムーズで、美大生なら日頃から絵は見慣れてるからさっさと流せるのかもしれないけど、間近で絵を見るなんて滅多にない凡フリーターとしては一枚一枚の絵の曲線やら発色やらがいちいち心に響いて、作品の前で立ち止まってしまうことしばし、何度も何度もループしてグルグル見てしまいました。
 と、ここらでダーガーとしての感想もちょっと。奇矯ともいえる造形や世界観も面白いっちゃあ面白いのだけれど、僕はそれ以前に色の美しさにただただ目を奪われてしまいました。あの花々のある意味塗り絵チックな色の美しさ! あと、個人的に一番ハッとしたのは「初期のドローイング」という説明書きのあった5枚計7人の女の子の愛らしさたるや、その膝上から靴下、靴に至る線の繊細さ。それぞれの洋服のデザインと表情。卒倒ものでした。衝撃という意味でいえば、なんと絵が「紙の裏表に書いてある」ということも(笑)。表の女の子の裸の体に裏の女の子の叫び顔が透けて映っているなんて、「自分のために描いた」という事実があまりにも明白で軽く震える心持ちでした。展示もそういう見せ方をしていたし、もっとゆったりしていたら紙の裏表で絵を眺めてみるなんていうこともできたかもしれません。展示自体は彼の作品の極々一部に絞られていたようなので、別の作品も是非見てみたいものです。