猫の話

 よほど猫が好きなようで……。今のバイトというのが服装が白シャツにネクタイ着用っていう規定があって、よって、現在僕は毎朝スーツ姿で満員電車に揺られて出勤という、まさか自分がこんな目に遭うとは思わなかったな感じなのだけれど、そんな思いで最寄駅まで歩いていくといるんですよねえ、あちこちに猫が。明け方布団から出るのが嫌なくらい冷え込むこの時期、だんだん日が黄色みを帯び始める九時前ともなると、何匹かで揃って日なたへ出てきて、前肢をそろえて行儀良くしゃがんだり、香箱を作ったり、後肢をだらしなく広げて腹を出して別の猫に寄りかかったり、そんな風にくつろいでいる猫というのは全く平和そのもので、スーツ姿で寒々としたこちらの心をこれ以上なく温めてくれるのですよねえ。もし世界から猫が一匹もいなくなったら、とたんに人々の心は荒み、憎悪と焦燥と虚無感とが蔓延して一年足らずで人間は滅んでしまうのではないかと、そんなことまで考えます。もはや尊敬してます、猫。