もう何記念日でもいいや

 数ヶ月振り、ひょっとしたら一年以上振りに猫に触れました。帰り道の歩道の脇に小柄な猫が香箱を作って俯いているのでしゃがみこんで撫でてみると、これがひどく人懐こい猫で、あの猫特有の体重を押し付けてくる感じで(町田康風に「くんくんに」というやつ)手足に絡み付いてくる。思わず提げていた缶ビールと葱の入ったビニール袋を地べたに置いて撫で回してやりました。その猫はあちこち毛がはげていて明らかに皮膚病だったけれど一向に気にしない。チャリンコで通りかかった学生の集団が嘲るように見下げていたけれど一向に気にしない。こうしてこちらが苦しくて堪らないような時に、猫という存在は一条の光として目の前に現われてくれるのです。この世から猫が一匹もいなくなったら、僕が消えるか、世界が崩壊するか、どちらが先でしょうか。