読了

 青空が見えたので洗濯物を干し、陽の光を浴びながら先日図書館で借りた森見登美彦氏の『太陽の塔』を読み進める。ラストが近付くにつれ、どういうわけか目の前がぐんぐんと暗くなっていく。窓を開けると今にも降り出しそうな曇り空。慌てて洗濯物を室内に取り込み、読み物を進める。物語りも佳境、あと数ページというところで突如窓外に稲光が走り、雷鳴が轟く。その激しさは残りページが少なくなるにしたがい勢いを増す。遂には物凄い音とともに何年振りかで目にする雹(ひょう)が次々と窓にぶち当たってくる。なんと森見氏の小説は天候や自然現象まで左右するのかと若干恐れ慄きながら最後の言葉を読み終える。少なくとも僕がここ数年読んだ小説の中で最も「愛すべき」小説であろう。学生時代にこれを読んでいなかったこと、つまり、リアルタイムではなくある程度学生としての自分自身を冷静に客観できるようになってからこの小説に出会えたことをありがたく思う。そんな僥倖にしてもあのカミナリはいささか派手な演出だったけど。
 昼飯に蕎麦を茹でてすすっていると雨が止み雲も晴れて、窓外には再び青空が広がったので洗濯物をもう一度干しなおした。嘘のような天気だった。