クモ屋敷

 5日に見かけた全長10cmほどのアシダカグモですが、あれ以来うちでは一度も顔を見せません。せっかく「観音(カノン)」という我ながらステキな名をつけてやったというのに。では、それじゃあ餌となるゴキブリが家から消えたのかといったら、そんなことはなくて、つい昨日台所のシンク下の引き戸を開けてラーメンのスープ掬い用の蓮華を取り上げてみたら、その蓮華の中から大〜きなゴキブリが飛び出してきて声にならない奇声と共に我をして後方に30cmほど跳躍せしめてみたものです。お陰でとうとうゴキブリ駆除剤を買ってきてシンク下に設置する羽目になったりして。
 と、その一方で、我が家には他にもう二匹のクモが棲みついています。一匹はやはりアシダカグモの「黒太郎」。これもカノンが現われた頃からウチにいるのですが、カノンと違うのは黒太郎はもっぱら六畳の居間の天井に居って、いつ見ても八肢を丸くくるめているので全体が真っ黒い玉のように見えるのです。そうして毎日見ていていつ見ても天井でぼうっと黒く固まっているんで、たまには御馳走をしてやろうと、在宅中には機を見て窓を開けて外からクロちゃんの餌になるような昆虫が飛び込んでくるのを待っていたりしたのですが、なかなかうまいこと昆虫が我が家に入ってこず、でもって、今日日も天井でじっとぶら下がっております。
 もう一匹のクモは「祥ヤン」といって、これまたアシダカグモなのですが、全長2cmくらいのまだまだ仔グモです。こいつは今日一日だけでも浴室の壁に這っていたり、居間の壁面にとまっていたり、ある時は畳の上を駆け回っていたりと、全くこの末が気になるじゃじゃ馬娘なのでございます。今現在はキーボードを打つ私の右後方天井と壁の繋ぎ目の木目につらまってまだ若いながらも意気揚々と室内を見下げております。
 こうして3匹のクモと共に暮らしている毎日ですが、しかし、こうして3匹もこうしたクモがいるということは、やはり我が家にはまだ彼らの餌となるゴキブリが棲息しているということなのでしょう……はは。